ペルシャ絨毯のタグ・ラベルの見方。裏面に隠された情報を解読して価値を知る

もしあなたが、ご自宅にあるペルシャ絨毯の価値を知りたいと思ったなら、まずは絨毯を裏返してみてください。そこには、その絨毯の「身分証明書」とも言える重要な情報が隠されているからです。

美しいデザインや色彩は表面を見れば分かりますが、それが「どこの誰によって作られたのか」という出自は、裏面にこそ如実に表れます。本記事では、専門家が査定時に必ずチェックする「裏面の解読方法」を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。

なぜ裏面を見る必要があるのか?

ペルシャ絨毯の価値を決定づける要素の多くは、実は表面よりも裏面に集約されています。表面の模様は模倣することが容易ですが、裏面の織り目やタグ、サインといった情報は、その絨毯の「育ち」を雄弁に語るからです。

たとえば、まったく同じデザインの絨毯が2枚あったとしても、裏面の情報の違いだけで、価格に数十万円から数百万円もの差がつくことがあります。これは、ブランドバッグにおける「保証書」や絵画における「画家の署名」と同じ役割を、絨毯の裏面が担っているためです

ペルシャ絨毯の「身分証明書」を探す

まずは、絨毯の裏面にある何らかの「文字情報」を探すところから始めましょう。一般的に、ペルシャ絨毯には「タグ(ラベル)」や「サイン(織り込み署名)」といった形で、その絨毯の情報が記されています。

最も分かりやすいのは、絨毯の裏面の隅に貼り付けられた紙製や布製のラベルです。ここには、輸出時に貼られた「原産国証明」や、販売店が管理のために貼った「商品タグ」などが含まれます。

一方で、より重要度が高いのは、絨毯の織り目そのものに文字が組み込まれている「サイン(署名)」です。これは通常、絨毯の表面上部(フリンジの近く)の中央や端に、アラビア文字のようなペルシャ文字で織り込まれています

もし何も見つからなかったとしても、すぐに「価値がない」と判断するのは早計です。アンティーク絨毯や遊牧民が織った部族ラグ(トライバルラグ)には、もともとタグやサインが存在しないことが一般的だからです。

工房名(サイン)の読み方と重要性

ペルシャ絨毯において、製作者のプライドの証とも言えるのが、絨毯の上部に織り込まれた「サイン(署名)」です。このサインは、通常「枠(カルトゥーシュ)」の中に文字が収められたデザインになっており、ここには産地や工房名が記されています

サインの多くは「イラン・〇〇(産地)・〇〇(工房名)」という定型文で構成されています。たとえば、「イラン・クム・ラジャビアン」と書かれていれば、それはクム産地で作られた、名門ラジャビアン工房の作品であることを主張しています。

有名な工房のサインが入っている場合、それは単なる絨毯ではなく「ブランド品」としての価値を持ちます。クムの「ラジャビアン」や「マスミ」、イスファハンの「セイラフィアン」、ナインの「ハビビアン」などは、世界的に評価されるトップブランドです。

しかし、ここで注意しなければならないのは、ペルシャ文字は右から左へと読むという点です。もし解読を試みる場合は、文字の並び順に注意しつつ、インターネット上のサイン一覧画像などと照らし合わせる作業が必要になります。

また、サインは必ずしも「織った本人」の名前ではなく、工房のオーナーやデザイナーの名前であることが一般的です。これは、映画監督の名前が作品のクレジットになるように、絨毯制作を指揮した親方(マスター)の名前がブランドとして刻まれるためです。

イラン国立絨毯公社などの公的ラベル

絨毯によっては、裏面に封蝋(シーリングワックス)のようなものが付いていたり、公的なマークが入ったラベルが貼られていたりします。それは、イラン政府や公的な機関が品質を保証した証である可能性があります。

特に信頼性が高いのが、「イラン絨毯公社(Iran Carpet Company / ICC)」のラベルです。1935年に設立されたこの国営企業は、ペルシャ絨毯の伝統保護と品質管理を担っており、ここのラベルがあるものは間違いなくイラン製の本物です

また、古い時代の絨毯には、輸出許可証として鉛の玉がついていたり、特定のスタンプが押されていたりすることもあります。これらは、その絨毯が正規の手続きを経てイランから海を渡ってきたことを示す、歴史的な証拠となります。

ただし、こうしたラベルは経年劣化で剥がれ落ちてしまうことも珍しくありません。ラベルが残っている場合は、無理に剥がそうとせず、そのままの状態を保つことが査定額アップにつながります

サイズ表記とノット数の確認

タグやラベルには、文字だけでなく数字も記載されていることが多いのをご存知でしょうか。ここには、絨毯のサイズや、品質の指標となる「ノット数(織りの密度)」が記されています。

サイズ表記は通常、センチメートル(cm)またはメートル(m)で書かれていますが、古いものではイラン独自の単位が使われていることもあります。「ザロ・チャラク」などの伝統的な単位で書かれている場合、それはかなり古い年代に作られたものである可能性を示唆しています。

ノット数は、1平方メートルあたり、あるいは特定の長さあたりにいくつの結び目があるかを示す数値です。この数字が大きければ大きいほど、織りが細かく、手間がかかった高級品であると判断されます。

たとえば、ナイン産の絨毯では「6La(シックス・ラ)」や「9La(ナイン・ラ)」といった表記を見ることがあるかもしれません。これは糸のよりの太さを表しており、数字が小さい「6La」の方が糸が細く、より緻密で高級な絨毯であることを意味します。

ペルシャ数字の解読に挑戦する

絨毯のタグやサインに書かれている数字は、私たちが普段使うアラビア数字(1, 2, 3…)ではなく、ペルシャ数字であることが多いです。このペルシャ数字の形を知っておくと、製造年やサイズを自分で読み解くことができるようになります。

まず、「0」は中空の点「・」または小さな丸「0」で表されます。「1」はそのまま「1」に近い形ですが、「2」と「3」は少し特殊な形をしています。

「4」は「4」を少し崩したような形、「5」は逆さまのハートや雫のような形をしています。「7」と「8」は非常に紛らわしく、「V」の形が「7」、逆V字「Λ」の形が「8」を表します。

もしタグに「۱۳۵۰」のような数字の列があれば、それはイラン暦(ヒジュラ暦)での製造年かもしれません。イラン暦は西暦とは異なるため、変換サイトなどを使って西暦に直し、どれくらい古いものかを確認してみるのも一興です。

素材に関する表記を読み解く

ラベルには、その絨毯に使われている素材(マテリアル)が記載されていることもあります。ペルシャ絨毯の主な素材は「ウール(羊毛)」と「シルク(絹)」、そして縦糸に使われる「コットン(綿)」です。

英語で「100% Silk」や「Wool & Silk」と書かれていれば分かりやすいですが、ペルシャ語で書かれている場合は判別が困難です。しかし、素材の表記は価格に直結する重要な情報であるため、分からなければ手触りや光沢で判断することになります

一般的に、シルクが使われている絨毯は、光の当たり方によって色が変わる「順目・逆目」の効果が強く出ます。また、ウールであっても、子羊の首元の毛を使った「コルクウール」などの高級素材が使われている場合は、ラベルにその旨が特記されていることもあります。

ペルシャ語が読めない場合の解読テクニック

「ペルシャ文字なんて読めないし、どうすればいいの?」と諦める必要はありません。現代には、スマートフォンのカメラを使った便利な翻訳ツールがあるからです。

Googleレンズや翻訳アプリのカメラ入力機能を使い、絨毯のサインやタグを写してみてください。完璧な翻訳とはいかないまでも、「Qom(クム)」や「Tabriz(タブリーズ)」といった都市名がアルファベットで表示されれば、大きな手掛かりになります。

また、サインの特徴的な形(ロゴマークのようなもの)を写真に撮り、画像検索にかけるという手もあります。有名な工房であれば、同じサインを持つ絨毯の画像が検索結果に現れ、そこから工房名を特定できるかもしれません。

それでも分からない場合は、鮮明な写真を撮って、買取業者の「LINE査定」や「メール査定」に送るのが確実です。プロの鑑定士は、サインの崩し字や独特の書体にも慣れているため、写真さえあれば一瞬で解読してくれるでしょう。

ラベルがない=価値がない?

「私の絨毯にはタグもサインもないから、偽物か安物に違いない」と落ち込む必要はありません。むしろ、ラベルがないことが「アンティーク」や「一点物」の証であるケースも多いからです。

100年以上前に作られたアンティーク絨毯には、現代のような輸出用タグは付いていませんでした。また、遊牧民が自分たちの生活用具として織った「ギャッベ」や「キリム」には、基本的にサインを入れる習慣がありません。

サインがない絨毯は「無銘(むめい)」と呼ばれますが、無銘であっても品質が極めて高いものは数多く存在します。むしろ、無銘であることは「特定の工房ブランドに頼らず、絨毯そのものの質で勝負できる」という、玄人好みの逸品である可能性さえ秘めています。

したがって、ラベルの有無だけで自己判断して処分してしまうのは、非常にもったいない行為です。タグがない場合こそ、織りの細かさやデザインの美しさといった、本質的な価値を見極める目が必要になります。

要注意!偽物や模造品のラベル

残念なことに、ペルシャ絨毯の世界には、精巧な偽物や模造品が数多く出回っています。そして、それらの偽物には、もっともらしい「偽のラベル」や「偽のサイン」が付けられていることがよくあります。

特に多いのが、中国製やインド製のシルク絨毯に、イランの有名産地である「Qom(クム)」というタグが付けられているケースです。これらはデザインもペルシャ絨毯を模倣していますが、よく見ると「Made in China」の表記が小さくあったり、織りの質感が異なったりします。

また、機械織りの絨毯に、手織りのように見せるための偽サインが刺繍されていることもあります。機械織りの場合、裏面を見ると模様がのっぺりとしており、タグに「Machine Made」や「Polypropylene(ポリプロピレン)」といった化学繊維の表記があるはずです。

さらに悪質なのは、本物のペルシャ絨毯(ただし無名の工房作)に、後から有名工房の偽サインを縫い付ける「サインの偽造」です。この場合、サインの部分だけ糸の色が浮いていたり、織り目が不自然に詰まっていたりするため、プロが見れば違和感に気づきます。

まとめ

ペルシャ絨毯の裏面には、産地、工房、素材、年代といった、その絨毯の価値を証明する情報が詰まっています。タグやサインを見つけ、それを正しく解読することができれば、お手持ちの絨毯が「ただの敷物」から「価値ある資産」へと変わるかもしれません。

しかし、ペルシャ語の解読や、偽サインの見極めは、一般の方にはハードルが高いのも事実です。「本物のサインなのか分からない」「書いてある内容を知りたい」という場合は、迷わず専門家の力を借りることをおすすめします。

次の記事では、こうした裏面の情報を基に、実際にどれくらいの価格で売れるのか、プロの査定員がどこを見ているのかを詳しく解説していきます。まずは、スマホで裏面の写真を撮ることから始めてみましょう。それが、高価買取への第一歩となります。

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